3/29
前へ
/29ページ
次へ
 滝沢自身はそんな島に主計中尉として赴任し、彼らの食料の調達や風紀を担当していた。  部下となった工員たちはほとんどが年上で、Oもそのころには二十七、八だったはずだ。  工員たちは滝沢にたいして、気軽に声をかけた。言葉はいつもくずれていたが、滝沢は気にしなかった。特別好かれていたわけではないが、嫌われてもいない。突然後ろから殺されないだけでも、ありがたかった。  日雇いや肉体労働者の多い工員になぜOのような男がいるのか、不思議だった。名前と出身地を知っているくらいで、詳しい出生は本人から聞いたことがない。 特別若いわけでも、華奢なわけでもなかったが、ぼんやりとした彼には不釣り合いな気がした。とはいえ、兵士になるのになにか支障があるわけでもなく、年齢的にも兵士にされない理由はない。だが、工員としてOはここにいた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加