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米軍の空爆が増すにつれて、女性たちは内地に帰ってしまい、そのころになれば、男色は日常になっていた。
滝沢は納得した。時折、Oの視線はうっとりと後藤に注がれ、後藤はそのことに満足しているようだった。おそらくぎこちない肉体関係よりも。空腹からくる気だるさ、絶望と諦念を一瞬でも忘れさせてくれるものだったのだろう。だから後藤はOに対しておしみなかった。食べ物を分け与え、労働を肩代わりしてやっていた。
時をおかず滝沢も慣れて、なんとも思わなくなった。
男色に慣れた滝沢だったが、それでも後藤のような男がOの面倒を甲斐甲斐しく見ている姿はなんというか、奇妙だった。
しかたねえなと、思いがけなく優しい口調に、こちらが動揺してしまうほど。
後藤の献身ぶりは、鳥類の夫婦に似ていて、少しだけ笑ってしまった。
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