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でも、気持ちがつらくなって、のみこめない。とうめいのおはし。卵焼きをつまめば、少しこげたたまご色が、みるみるとうめいに変わるんだ。こんなことが、おこるなんて。
「そうだよなあ、のど通らないよなあ。はじめてだもんな」
とうさんはそんなことばかり言ってる。
「とうさんもそうだったよ。最初はどうなっちゃうのかと思ったよ」
どういうことなのか、説明してよ。
「とうめいになる人と、ならない人がいるということだよ」
とうさん、どういうこと?
「世の中には、体が時々とうめいになる人と、ならない人がいるということよ」
どういうことなの、かあさん、そんなこと知らなかったよ、ぼく。
「かあさんも、それ以上のことは知らないのよ。ただ、あなたは、とうめいになる人だった、ということが今日確かになったの」
「とうさんだって、それ以上は知らない。このことは、なった人にしか理解できないことだから、あまりおおやけに話されないことなんだ」
理解できないよ、ぼく。
「そうだよなあ、とうさんも、おばあちゃんに説明されても、分からなかったもんなあ。でも、分からなくても、とうめいな体になってしまうのだから、受け入れるしかないんだ、って、おばあちゃんに言われたなあ」
「かあさんも、あなたのおじいちゃんから、そのうちになれるって言われたわ。最初は悲しかった」
なぜ今まで、教えてくれていなかったの?
知っていたら、よかったよ。
「とうさんもむかしそう思ったよ。でもさ、なってみないと、体がとうめいになるなんて、信じられないんじゃないかな」
「そこがつらいところなのよ。体がとうめいになります、なんて、とうめいにならない時に聞いても、かあさんはわからなかったと思う。怖くなったかも知れない、病気のように思ったかも知れない」
かあさんもとうさんもおかしいよ。病気かもしれないし、治るかもしれないし、研究すればならない薬ができるかもしれないのに。
「初めてとうめいになったから、あなたはまだわからないかもしれないけれど」
かあさんは続けた。
「これは病気じゃないって、そのうちわかるようになるわ」
かあさんは、ぼくの髪を、自然にさわった。
「それにね、とうめいになったことがある人同士は、みえるようになるのよ、ちゃんと」
この日、いつも通り学校に行くようにといわれて、どうしようもない気持ちのまま、登校した。
そして。
だんだんと見えてきたんだ。
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