0人が本棚に入れています
本棚に追加
くそっ!キャバクラでも行くか。アヤカちゃんならきっと分かってくれるさ。俺は地下鉄に向かった。すると俺の目の前で、女性が足を滑らせて転んだ。「あ、大丈夫ですか?」俺が手を差し出そうとすると「嫌!近寄らないで!」女性は怯えた声を上げた。「ええ?」すると周りの人が、何だ何だと集まって来た。「勝手にしろ!」俺はそのまま地下鉄に乗った。どうなってるんだ?どいつもこいつも。
そしてキャバクラに入り、アヤカちゃんを指名した。すると席に着くなりアヤカは「もう私を指名しないで下さい」とチェンジを訴えた。
それから1時間、誰も俺の席に来なかった。
落ち込んだ俺は、とぼとぼ家路に向かった。
これが本当の俺の姿なのか?誰にも相手にされず、ただ嫌われていた。
その時浮かんだのは、妻の顔だった。あいつだけが、いつも側にいてくれた。今頃気付くなんて、俺はなんて馬鹿なんだ!
謝ろう。彼女に謝って一からやり直そう。
そう誓って玄関を開けた。妻は台所にいた。
「今まで済まなかった。俺は優柔不断で、いつもお前に迷惑ばかりかけて来た。でも分かったんだ。
お前だけが、俺を理解してくれていると」
私は、こんなに効くのかと驚いた。そして振り向いて「いいのよ、あなた。分かってくれたのなら。だって夫婦でしょ」と応えた。
夫は涙目になって、うんうんと頷いていた。
「さあ、食事にしましょう。ほら、上着を脱いで」
私は夫に近づいて、上着に手をかけた。
そして、私は言った。
「あなた、私は今日限りで実家に、帰らせていただきます」
防虫剤の効果は絶大だった。
終わり
最初のコメントを投稿しよう!