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4話 口裂け女
「ねえトオル。口裂け女って知ってる?」レストランでワインを飲んでると、マキが聞いてきた。
「また古い都市伝説だな。勿論知ってるさ。わたし綺麗?って聞くやつだろ」僕はグラスを空にして、またワインを注いだ。
「なんか最近になって、また目撃されてるらしいのよ。最近の口裂け女はしつこくて、色々と聞いてくるんですって」
「へーそうなんだ」僕の興味は口裂け女よりも、マキのこれからの予定だった。
まず終電まで引き伸ばして…何て考えていると
「聞いてるの?だから正直に応えると消えるの。きっと本当の事が知りたいのね」とマキはまだ話している。
「それより、これからさ…」と僕が切り出した途端「あっ、もう時間だわ。ごめんね。親がうるさいんで今日も帰るね」マキは、僕の心を読んだかの様に立ち上がった。
マキを駅まで送り、僕は自分のアパートに向かった。帰り道、街灯だけが頼りの、高架下のトンネルに差し掛かった。そると、その真ん中で髪の長い女性が立っていた。
薄いベージュのコートを羽織っている。
少しずつ近づいて行くと、マスクで口元は隠されていた。まさかな?僕は少しびびった。
すると女性は、立ちはだかる様に僕の前を遮った。
「な、何なんですか?あなたは」僕はかなりびびっている。落ち着け、俺。
もしそうだとしても、相場は綺麗な女性と決まっている。正直に言えば消えてくれる。
マキの話を、何度も思い出していた。
「わたし綺麗?」女性はマスクを外して裂けた…裂けた?あれ?裂けてない。口元は避けてなかった。
でも、もの凄くブスだった。
「えーと、あのう、お綺麗です」と嘘をついた。
「どの辺が?」女性がまた聞いた。
「えーとですね。目元が」とまた嘘をついた。
「他には?」とまたしても聞いた。
「えーと、特に思いつきません」と正直に言ってしまった。すると女性は、すうっと消えてしまった。
「はあ、良かった。少しちびったよもう」
僕は後ろを振り返りながら、やっと玄関に着いた。
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