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 恐れられるのは慣れている。神様だと思よりずっとマシだ。  勝手に神様にされたときは本当に苦しかった。最初は嬉しかった好意的な視線も重荷に変わって、新しい旅を始めるのにかなり手こずってしまった。  旅に出る前は考えもしなかったけど、神様というのはかなりの苦労人だと思う。  しばらくして、さっきまで私と言い争いをしてた方の子が恐る恐る、ポケットから何かを出して渡してきた。 「クッキー、だね?」  この青い袋には白いクリームが挟まった黒いクッキーが入っている。トウブンとしては申し分ない。 「ありがとう」  私がそれを口に含むと、身体がふわっと浮き上がる。  きっと下にいる二人は驚いているんだと思う。チキュウの人間は自力で身体を浮かせることは出来ないから。  あっという間に子猫がいる太い枝にすとんと留まった。  ここで鳴き声だけしか知らなかった子猫の姿を初めて見る。子猫は白い靴下を履いているように見える黒猫だった。驚いたのか身を縮こまらせている。 「ねえ、この子はどっちの猫ー?」  私は呆然としてる二人に大声で聞くと、すぐに浮かない表情に変わった。  多分、野良猫なんだろう。  ここの世界ではこういうのはややこしい問題だ。どちらも飼えないことを心苦しく思っているのだろう。  私の世界では一人前になった証に猫を飼う決まりがある。故郷の多々ある決まりが鬱陶しくて旅を出た訳だけど、この決まりだけは別だ。 「うん。いい機会かもしれない」  私は猫の首根っこを掴む。 「この子、私が連れていくよ! だから、安心して!」  そう二人に伝えたあと、私は木の幹をノックした。  すると、そこから無数のパステルカラーの、色んな世界と繋がった空間が広がる。  今回はいい旅だったかもしれない。さて、次は何処へ行こう?
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