4人が本棚に入れています
本棚に追加
恐れられるのは慣れている。神様だと思よりずっとマシだ。
勝手に神様にされたときは本当に苦しかった。最初は嬉しかった好意的な視線も重荷に変わって、新しい旅を始めるのにかなり手こずってしまった。
旅に出る前は考えもしなかったけど、神様というのはかなりの苦労人だと思う。
しばらくして、さっきまで私と言い争いをしてた方の子が恐る恐る、ポケットから何かを出して渡してきた。
「クッキー、だね?」
この青い袋には白いクリームが挟まった黒いクッキーが入っている。トウブンとしては申し分ない。
「ありがとう」
私がそれを口に含むと、身体がふわっと浮き上がる。
きっと下にいる二人は驚いているんだと思う。チキュウの人間は自力で身体を浮かせることは出来ないから。
あっという間に子猫がいる太い枝にすとんと留まった。
ここで鳴き声だけしか知らなかった子猫の姿を初めて見る。子猫は白い靴下を履いているように見える黒猫だった。驚いたのか身を縮こまらせている。
「ねえ、この子はどっちの猫ー?」
私は呆然としてる二人に大声で聞くと、すぐに浮かない表情に変わった。
多分、野良猫なんだろう。
ここの世界ではこういうのはややこしい問題だ。どちらも飼えないことを心苦しく思っているのだろう。
私の世界では一人前になった証に猫を飼う決まりがある。故郷の多々ある決まりが鬱陶しくて旅を出た訳だけど、この決まりだけは別だ。
「うん。いい機会かもしれない」
私は猫の首根っこを掴む。
「この子、私が連れていくよ! だから、安心して!」
そう二人に伝えたあと、私は木の幹をノックした。
すると、そこから無数のパステルカラーの、色んな世界と繋がった空間が広がる。
今回はいい旅だったかもしれない。さて、次は何処へ行こう?
最初のコメントを投稿しよう!