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行きたいとこに行く。そう決めてどのくらいの時が過ぎたのかはわからないけれど、今の私は立派な放浪者だと胸を張れるくらいになったと思う。
ここはチキュウという世界のニホンという国だ。もっと正確に言うとニホンの町なんだと思う。
実は、何度か来たことがある。最初に失敗して意図せず来た場所で、ここに来る度に何かしら苦い思いをしている。
遠くからズドンッという音がした。
私は慌てて音がした方に向かう。そこは公園で、大きな樹木の脇に男の子が二人いた。
一人は涙目で座り込んでいて、もう一人はあたふたしている。
「怪我しちゃったんだ。アメはある?」
私はすぐに痛そうにしているその子に声を掛けた。その子はぽかんとした表情に変わる。
「な、何だよ! お前……」
すると、もう一人の子は私に突っ掛かってきた。
「いきなり現れて、そんなイタい格好、明らかにここの人間じゃないだろ!」
「そんなことより、早く怪我治さなきゃ」
「治すって、どうやって」
「だから、アメはある?」
「はあ!?」
目の前で言い争いが繰り広げられて、怪我した子がまた涙目になっている。
人間は興奮すると、なかなかまともに話を聞いてもらえない。
私に突っ掛かっている子は今、その状態にあるのだろう。残念ながら、私はそういう人間と話すのが苦手だ。
「にゃー」
ふと、上の方から鳴き声が聞こえてくる。
木から降りれなくなった子猫だ。何処の世界の猫も高い所が好きなようだ。
なるほど。これで怪我をしていたのか。
「あの子を助けたいの? だったら」
私は上を指差して笑い、三度目の「アメはある?」と続けた。
二人は困惑というのだろうか。明らかに戸惑った表情をしてる。
「アメないの? だったら、この世界でいうトウブンなら何でもいいよ」
ここまで言って何も出さないのはアメがないということだと思う。
だったら、代用品を頼むしかない。
今まで怪我をして座り込んでいた子が立ち上がり、言い争っていた子の服の裾を掴む。
二人は私から少し離れて、何やらひそひそ話を始めた。
「絶対にやべえ奴だよ」
「大人しく言うことを聞いて、ひとまず逃げよう」
勿論、聞こえてる。ここではよくそんな風に言われるから、特に気にしない。
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