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彼と彼女の祝福
「神様、神様。どうかこの子を愛してあげてください。この土地に嫌われた子なのです。どうか、祝福を……」
汚いが、上等な布でできた簡素な衣服を纏う女は神と呼ばれた存在のある場所ーー白樺の木の上ーーを向き、懇願した。腕には汚れた銀髪の赤子が抱えられている。
神と呼ばれた彼はそんな女と赤子を冷ややかに見つめ、言い放つ。
「……疾く、往ね」
女たちは一礼をして、踵を返し走っていった。
彼はそんな直前の態度や言葉とは裏腹に、女たちの去っていく姿を柔和な笑顔で見送った。
言葉や文化が大きく変わるほど長い時間を過ごしてきた彼にとって、彼の身体というものは今や只人と同じである。それを思い、かつて仲間であった男を恨めしく感じる。
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