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「あの藤倉センパイが、澤センパイのために、買ってくる…?ふぉお!さすが…さすが澤センパイッス。やっぱ半端ねぇわ」
何故か一人で納得してうんうんと頷くかしくん。何が半端無いんだろう。あの藤倉が、ってどういうことだ?パン買うのが珍しいってことかな。
え、あいつご飯派なの?
それにしても…うーん。今の彼を想像してもふにゃんとした柔らかな笑顔が浮かぶだけで、どこかかしくんの想像する彼と食い違っている気がしてならない。
ケンカとか決闘っていうのも意味が分からないし。
「かしくん。あのさ、かしくんの言う藤倉って、」
「話し辛くないんスか?藤倉センパイと」
お、おう…。俺の質問は全面スルーして更によく分からない質問を返す後輩。中学の時も何回か思ったけど、かしくん。君はもう少し人の話を聞くということを覚えた方がいいと思うぞ。
「話し辛い?何で?」
「いやだって、怖くないスか?あの人いつも眉間の皺すっげぇし無愛想っぽいし、」
「眉間の皺?寧ろいつもヘラヘラしてる気がするけど…」
誰のこと言ってるんだろうかしくんは。やっぱり俺の知ってる藤倉とは別のフジクラさんのお話だったのかな。だとしたら、今までの話の食い違いも何となく分かる気がする。
出会った頃のことはよく覚えてないけど、藤倉が眉間に皺寄せてるのなんて俺はあまり見た記憶がない。
寧ろ俺の中での藤倉はいつもへにゃっとした柔らかい笑顔で、決して近寄りがたい雰囲気ではなかった。
まぁ変態って部分を考慮するとある意味近寄りがたくもあるかもしれないが。
「ヘラヘラ?あの氷の藤倉センパイが…?」
何やら物凄く動揺しているかしくんは先程から「そんな馬鹿な」と独り言を繰り返している。俺も何に驚かれてるのかよく分からないんだけど、とりあえず落ち着くまで目の前の氷を突っついておこう。
氷。氷の藤倉って何だよ。通り名的な?中二病ネームにしてはいまいち捻りがないし、そもそも奴の何処に氷の要素があるっていうんだ。
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