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2.藤倉くんと触り合いっこ
「触ってい?」
「だめ」
「嫌なの?」
「寧ろウェルカムだよ?でも駄目」
「意味が分かんないよ藤倉」
「澤くんこそ変だよ、急にどうしたの」
「お前にだけは変って言われたくないな…めっちゃヘコむわ」
こないだピアス跡見つけたときに思ったんだけど、藤倉の髪って一体どうなってるんだろう。この前改めて間近で見て俄然興味が湧いたのだ。
一見毛先が遊んでてツンツンしてるように見えるが、ワックスとか付けてんのかな。触ったら意外と柔らかいのかも、なんて。
「そんなに触りたいの?俺の髪」
「いや、別にめちゃくちゃ触りたいわけじゃないけど」
「澤くんの髪触らせてくれるならいいよ?」
「話聞けよ。俺の髪?別に触ってもいいけど何も面白くねーと思うよ?」
「ほら」と目の前にあった藤倉の手を取りぽんっと俺の頭に乗せる。俺の髪なんて触ったところで本当に何にも得しないと思うんだけど、これくらいで藤倉の髪が触れるんならまぁいいか、というぐらいの軽い気持ちだったのだが。
藤倉はどうやらそんな感じじゃなかったみたいだな。何かフリーズしてる。
「あ、え、うぁ…」
「何言ってんのか分かんねぇよ、大丈夫?」
「えぇ、うわぁあ…」
駄目だ。会話が成り立たなくなってしまった。
あー、もしかして潔癖だったのかな。ボディタッチとか他人に触るの無理って人たまにいるけど、藤倉もそのタイプだったのか?
そう疑うも、今までのこいつのパーソナルスペースの狭さやボディタッチの数々を思い返すとその可能性は限りなくゼロに思えた。どっちかというと割と触ってくる方だもんなぁ、こいつ。
「さ、さらさら…あぁ、生きてて良かった…」
そこまでか…?
「うぁあ…」と謎の擬音を発しつつもゆるゆると俺を撫でる手は止めない藤倉。身長差的に撫でやすいのもあるのだろうが、撫でる時間がちょっと長い。俺的には一、二回撫でて終わりくらいのイメージだったのだが、細長い指先は今やくるくると長くもない俺の横髪を弄んでいた。
時折彼の指が耳輪を掠め、思わずぴくりと肩が跳ねる。さっきまで硬直していたくせに、その様子を楽しむように藤倉はすうっと瞳を細めて俺を凝視している。わざと触っているのか、それが数回続いた。
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