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黒縁眼鏡を拾うが、レンズには亀裂が入ってフレームもひしゃげ、もうかけられそうにない。
「ごめんなさいねえ。うちのマサルが」
「いえ、僕の方こそ大事な人形を落としそうになっちゃって」
「おい、お前の危機を救った恩人はこっちだぞ」
人形をキャッチしてくれた美少年が雛太に言う。
「あ、すみません……あなたのおかげで助かりました」
「なに、礼を言われるほどじゃない。当然のことをしたまでだ」
なら、なんで恩着せがましく礼を求めるようなことを言うんだろう?
助けてくれたのは事実だが、その態度がいささか横柄で雛太は素直に感謝しそこねる。
まったくなんなんだこの人は、と思って改めて顔をよく見て気がついた。
「あれ、あなた……もしかして『D研』の!?」
「一応はじめまして、かな。俺が北祥D研・会長の沢桐瞳瑠だ」
通称、ドール先輩。
雛太の前にそびえ立つ少年は、校内でも何かと物議を醸している先輩だった。
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