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瞳瑠先輩を初めて見たのは入学後間もなく講堂で行われた『部活動オリエン』の一幕だ。
運動部、文化部がそれぞれ工夫を凝らして新入生に対して入部を勧誘するスピーチや一芸を披露していった中、同好会扱いである『D研』の瞳瑠先輩は壇上に立つなり、こう言った。
「『D研』会長の沢桐瞳瑠です。部員はいりません。以上」
行儀よく聞いていた新一年生たちはざわめいた。
オリエン終了後も『D研』とは一体なんなのか、あの変人は何者だと話題になった。
様々な情報を継ぎ接ぎして分かったのは、『D研』というのはどうやら『人形研究会』の略称であるらしいこと。
その『D研』は人形やぬいぐるみの修理や、時に探偵の真似事をしているようだという未確認情報以外、その活動実態を知る者は誰もいないこと。
そして沢桐透瑠は埼玉県岩槻に本社を置く日本人形の老舗メーカー『桐玉』の息子であるらしいこと。
更に下級生の間で「ドール先輩」と呼ばれる彼は所謂アンティークドールから小児用のぬいぐるみ、はては工事現場の交通整理用旗振り人形にまでマニアックな知識を有する変人らしいという噂もあれば、ミステリアスな美男子として熱烈に憧れている女子生徒もいるという、甚だ賛否の分かれる人物であるということだった。
現在、沢桐瞳瑠は北祥学苑Ⅲ類の高等部二年生。
雛太が入学したⅡ類――大学進学を目指す三年制コースとは異なり、中高一貫の六年制コースに籍を置く文武両道の秀才、という一面も合わせ持っているらしい。
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