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――おっと。
予想外にずっしりとした重みが両手にかかった。やはり割れ物だ。そして、この北中通り商店街では月に一度、夜市が開催されていることを思い出す。
とすると、この人形はそこで商われる値打ちものなのかもしれない。
そう思った途端。
指先から腕、肩から全身へと緊張が広がった。
この手の骨董品が軽く百数十万という値をつけることがあるとテレビでも見知ったことがある。万が一にも落として割ったら大変だ。
早くおばあさんに返却してしまいたいと願っていると、
「やだ。チリ紙無いじゃない。買ってくるから、ちょっと待ってて」
「え、チリ紙? あ、あの、僕、持ってますけど! 後ろのポケット!」
けれど、おばあさんは耳が遠いのか、前方三十メートルほど先にあるドラッグストアへとすたすた歩いて行ってしまう。
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