プロローグ【ドール先輩、現る】

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 はあ、ほんと僕ってツイてない……。  高校入学を機にこの春からかけた伊達眼鏡もズレてしまっているが、今は両手がふさがっていて直せない。  無論、ポケットの中にいつも忍ばせてあるチョコビスケットを食べることもままならない。  小日向雛太、十五歳。私立北吉祥寺高校Ⅱ類の一年生。  それがこの四月から雛太が新たに得た肩書きだ。  キャメルカラーのブレザーにはまだ慣れないが、それは雛太にとって名門私立・北祥(ほくしょう)の生徒であることを証してくれる一種の鎧のようなものだった。  とはいえ、もしこの制服を着ていなかったら、この高円寺駅北口から程近い北中通り商店街を行きかう何人が雛太を高校生とみなしてくれることだろう。
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