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雛太は改めて観察してみた。
まさに今、自身の首あたりに寄り添っている西洋風陶磁器人形の顔をまじまじと。
栗の渋皮のような茶色の髪は優雅なうねりを帯びており、瞳は宝石のように透き通って円らかだ。
ドレスは楓のような色合いで、生地は幾重にも折り重なるように品よく縫製されている。
さすがに現代的とは言えないが、この手のアンティークドールとしては、まず可愛らしいと言える造形なのだろう。
もっとも、これを飾って様になるのは、暖炉と揺り椅子のある大きな洋館のリビングくらいに違いない。
この人形の持ち主らしいおばあさんは、どう見ても行商人風だった。
一体どういう経緯でこれを入手したのだろう。
多少気にはなったが同時にどうでもいいことでもあった。
それより早く人形を返したい。
「はあ、君、ちょっと重いよ。ダイエットした方がいいんじゃない?」
戻ってこないおばあさんにも辟易し、人形にそんな軽口を叩いた瞬間だ。
「あぁ? 誰がダイエットした方がいいってよ!?」
えぇ、急に誰――?
激しい怒鳴り声が聞こえてきた方に目をやると――
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