シーと少女

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名前はシーと言うんだよ かわいい 私も犬が大好き 頼んで買ってもらったら? 無理です 日本に戻ったばかりだし 女の子は一瞬さみしそうな表情を浮かべましたが、すぐに微笑みを取り戻してシーを見つめていました。 どんな事情があるのかわからないけど、やっぱり外国から来たんだ だから顔もハーフなんだ でも日本語はわかる 学校は? 友だちはいないのかな? そんなことを思いました。 それから一瞬ひらめきました。 レジ袋からシーの大好きなささみスティックを取り出し、袋を開けて女の子に2本渡しました。 食べさせてあげて 女の子の瞳が輝いたような気がしました。 ありがとうございます 女の子がささみスティックを1本シーの顔の前に持って行くと、シーは飛びつくようにして食べました。 女の子は満面の笑みを浮かべて、もう1本差し出しました。 シーに何を話ししてたの? と聞きたいところでした。 しかしそれは聞いてはいけないような、聞かない方がいいような気がして聞けませんでした。 そして、先日軽井沢に泊まった時も、兄の大学生の1人娘が、こっそりシーと2人で話しをしていたことを思い出しました。 幼い頃、食べる物に困らないようにと蟻の巣を探して、砕いたクッキーを巣のそばに置いてあげる優しい娘のことを思い出していました。 シーは女の子の方を見ながら、もっと頂戴とばかりにさかんにしっぽを振っていました。
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