シーと少女

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それからしばらく私たちは黙ったまま、シーが身体をぶるんと震わせたり、レジ袋に顔を近づけたり、ウロウロ歩いたりする様子を眺めていました。 どこまで行くの? おばあちゃんの家まで この近く? いえ秋田です そうか秋田かと思いました。 そしてようやく私は、むかし好きだった人も秋田出身で、どことなくこの女の子と顔が似ていたことに気がつきました。 彼女は純粋な日本人でしたが、やはりハーフのような顔をした美しい女性でした。 しかし腕にはリストカットの跡があり、最後に自殺してしまいました。 じゃ行くね 元気で ありがとう 私は立ち上がりパイプ径アーチ型の車止めから、リードを外しました。 最後に女の子は、はしゃぎ始めたシーの頭をなんとか撫でてくれました。 バイバイ 女の子は軽く手を振りました。 シーと私は、駐車場から公道へ向かって、歩き始めました。 女の子は、しばらく私たちを見送ってくれていましたが、しばらくして車の方へ元気よく駆け出しました。 ほんとに偶然出会った女の子だったけれど、むかし好きだった彼女が天国から舞い降りて来て、シーに大切な話しをしてくれたような気がしました。 とてもあり得ない話しだけど、そんな気がしました。 でもあの子は頑張って生きて欲しい そう思いました。 夜空にはいくつかの星が輝いていました。 私の母が癌のため60代前半で亡くなった晩、まだ3歳だったあの兄の1人娘が、夜空を見上げ星に向かって、おばあちゃんと叫んだことを思い出しました。 そして兄の妻、娘の母親が、南の空に1番輝いている星が、おばあちゃんの星だからね、と娘に聞かせてあげたことも思い出しました。 あれからもう10数年経ちます。 父も亡くなり、家には私1人になりました。 しかし、それからシーと暮らすようになりました。 振り返ると女の子はもう車の中のようです。 シーは何事もなかったかのように、さかんにしっぽを振って、ともに暗い道へと歩いてくれました。
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