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「ったく」
死んでから幾許か。それなりの時間が経っている為目ぼしいものはとっくの昔にはぎ取られている浮浪者の死体を蹴るように路地へと入れてマンホールの中へと蹴り込む。
そこは下水道への入り口であり、ここに入れておけば別の浮浪者が勝手に処理してくれる。食うに困った誰かがおそらくは食糧にでもするのだろう。
ともかく腐ることなく綺麗に処理してくれることにかわりはない。
「さて、寝るか」
一仕事終えた。当初の目的通り自宅で眠るとしよう。幸いな事にハワードは大きな仕事を終えたばかりで次の仕事の目途はない。
だから、ゆっくり眠れる。それも見越して飲んだのから当然、眠るに決まっている。真鍮製の鍵を回して軋む扉を開いて家へと入る。
「ん? なんだ」
そして、そこで眠る見知らぬぼろ布に包まれた何かに気が付いた。
「…………」
左手で銃を抜いてぼろ布に覆われた何かに向けながらその布を剥ぐ。さらされる少女の姿。まず目に付くのは惜し気もなくさらされた傷だらけで汚れた裸体ではなく、その頭頂部に存在するものだ。
「労働種か」
獣の耳。片耳に切れ込みのある三角形の黒猫の耳だ。それから人で言う尾てい骨の当たりから延びている尾。
「なるほど、警邏連中が探していたのはこいつか」
それらの特徴から紛れもない労働種の少女だとわかる。先ほど警邏に知らないかと聞かれた少女だろう。労働種が都市のこんな場所にいるはずなどないからだ。
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