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恭の言葉に火照らされ、料理の味はいまいち分からなかった。 「さて、帰るか」 「はい」 ふたりは店を出ると、手を繋いで屋敷まで帰った。 花言葉の話のせいで、妙に意識してしまう。 屋敷につくと、瑠璃は冷たい茶を淹れた。 「どうぞ」 「気が利くな。瑠璃、こちらへ」 瑠璃がいつもの場所に座ろうとすると、恭は手招きをした。 「なんでしょう?」 瑠璃が隣に座ると、恭は瑠璃を抱きしめた。 「きょ、恭さん……!?」 「瑠璃、改めて言わせてくれ。好きだ、お前を心から愛している。死んでも離さない」 いつもより低く艶っぽい声で言われ、どうしようもなく胸が高鳴る。 (恥ずかしがっちゃだめだ……) 瑠璃は自分に言い聞かせると、まっすぐ恭を見つめた。 「私も、愛してます……。ずっとずっと、そばに……おいてください」 「当たり前だ、ずっとそばにいろ」 恭はそう言って瑠璃に口吸いをした。 「ん……」 瑠璃は大人しくされるがままでいる。 「このままで構わないと思っていたが……ちゃんとすべきなのだろうな」 恭は瑠璃を愛おしげに見つめながら言う。 「恭さん?」 「瑠璃、明日にでも婚姻届を出しに行こう。式は……猫の湯にでも任せて」 「嬉しいです……。恭さん、なんなら今からでも婚姻届出しに行きませんか?」 「それは出来ない相談だ。私は今、瑠璃との時間を大切にしたい」 恭はもう一度、瑠璃に口吸いをする。 「そういう事でしたら明日にしましょう」 「瑠璃、お前の事は私が幸せにしよう」 「もう既に幸せにしてもらってますよ」 瑠璃はそう言って優しく微笑む。 「嬉しい事を言ってくれる……」 恭は穏やかな笑みを浮かべると、瑠璃を抱きしめ直し、ふたたび口吸いをした。
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