3/12
前へ
/168ページ
次へ
「どうせまんじゅうが邪魔で全員は中に入れんだろう」 恭は罪人を繋いでいる縄を咲久に渡すと、軽々と牛車の屋根に飛び乗った。 瑠璃達は牛車の中に入る。恭の言う通り、牛車の中は薬草まんじゅうで狭い。 最後に縄を持った咲久が乗ると、恭は赤兵衛に合図を出して牛車が動く。 ぬらりひょん達は晒し者にされながら、月宮を囲む森まで歩かされた。 森に付くと赤兵衛は薬草まんじゅうを抱え、ひかりを肩車しながら歩く事になった。 罪人は相変わらず咲久ひとりに引かれ、俯きながら歩く。 瑠璃は恭に手を引かれながら、あまり整備されていない道を歩く。 月宮の門をくぐると、前鬼と後鬼が血相を変えて走り寄る。 「ぬらりひょん様!?」 「どういう事だ、鈴付き共!」 「ぬらりひょん“様”は罪を犯した。閻魔大王“様”に適正な裁きをしていただく」 恭はわざとらしく様付けで言う。 「う、嘘だ……!」 「何かの間違いだ!そうでしょう!?ぬらりひょん様!」 前鬼と後鬼はすがるように言うが、ぬらりひょんは重々しく首を横に振った。 「そんな……」 ふたりは呆然と立ち尽くした。 「そういう事だ、通らせてもらう」 恭はふたりの間を通り抜け、瑠璃達もそれに続いた。 謁見の間の前に着くと、恭は立ち上がって振り返る。 「咲久、そいつらを持ったまま、少しここで待っていてくれ。閻魔の阿呆を正気に戻したら声をかける」 「えぇ、ここで待ってるわ」 咲久が頷くと、恭達は謁見の間に入った。 「んん?恭ではないか。いつぞやの赤鬼や小娘、それに幸雪まで。どうしたというんだ?」 閻魔大王はひとりひとりの顔を見ながら言うが、目は虚ろ気味だ。 ひかりは赤兵衛の後ろにいるため、閻魔大王の視界には入らないらしい。 「閻魔に美味いものを食わせようと思ってな。赤兵衛」 「おう。……閻魔大王様、どうぞ食べてください」 赤兵衛は使いなれない敬語で言うと、閻魔大王の前に薬草まんじゅうの箱を置いた。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加