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「どうせまんじゅうが邪魔で全員は中に入れんだろう」
恭は罪人を繋いでいる縄を咲久に渡すと、軽々と牛車の屋根に飛び乗った。
瑠璃達は牛車の中に入る。恭の言う通り、牛車の中は薬草まんじゅうで狭い。
最後に縄を持った咲久が乗ると、恭は赤兵衛に合図を出して牛車が動く。
ぬらりひょん達は晒し者にされながら、月宮を囲む森まで歩かされた。
森に付くと赤兵衛は薬草まんじゅうを抱え、ひかりを肩車しながら歩く事になった。
罪人は相変わらず咲久ひとりに引かれ、俯きながら歩く。
瑠璃は恭に手を引かれながら、あまり整備されていない道を歩く。
月宮の門をくぐると、前鬼と後鬼が血相を変えて走り寄る。
「ぬらりひょん様!?」
「どういう事だ、鈴付き共!」
「ぬらりひょん“様”は罪を犯した。閻魔大王“様”に適正な裁きをしていただく」
恭はわざとらしく様付けで言う。
「う、嘘だ……!」
「何かの間違いだ!そうでしょう!?ぬらりひょん様!」
前鬼と後鬼はすがるように言うが、ぬらりひょんは重々しく首を横に振った。
「そんな……」
ふたりは呆然と立ち尽くした。
「そういう事だ、通らせてもらう」
恭はふたりの間を通り抜け、瑠璃達もそれに続いた。
謁見の間の前に着くと、恭は立ち上がって振り返る。
「咲久、そいつらを持ったまま、少しここで待っていてくれ。閻魔の阿呆を正気に戻したら声をかける」
「えぇ、ここで待ってるわ」
咲久が頷くと、恭達は謁見の間に入った。
「んん?恭ではないか。いつぞやの赤鬼や小娘、それに幸雪まで。どうしたというんだ?」
閻魔大王はひとりひとりの顔を見ながら言うが、目は虚ろ気味だ。
ひかりは赤兵衛の後ろにいるため、閻魔大王の視界には入らないらしい。
「閻魔に美味いものを食わせようと思ってな。赤兵衛」
「おう。……閻魔大王様、どうぞ食べてください」
赤兵衛は使いなれない敬語で言うと、閻魔大王の前に薬草まんじゅうの箱を置いた。
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