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「おお、まんじゅうか!まんじゅうは大好物だ!」
閻魔大王は、箱ごと薬草まんじゅうをすべて口に放り込んだ。
始めこそ美味しそうな顔をしていたが、口元をおさえて渋い顔をする。
「ま・さ・か、閻魔大王様とあろうお方が、善良な町人が丹精込めて閻魔大王様のためだけに作ったまんじゅうを、吐き出すなどしないだろうな?作った本人達の前で」
実際に作ったのは工場で働く従業員達だが、ここは恭の得意な“嘘も方便”である。
閻魔はゴクリと大きな音を立てて飲み込むと、深呼吸をしながらゆっくりとまばたきをする。
まばたきをする度に、虚ろ気味だった目はしっかりしてくる。
「ん、んん?わしは……どうしておったのだ?お前達をなんとなく迎えたのは覚えておる……。だが、今の今までわしは、何をしておったのだ?」
閻魔大王は顎をさすりながら、なんとか思い出そうとする。
「思い出すのは難しいだろう。今まで夢見草を盛られていたのだからな」
「夢見草?いったい誰が……」
恭の言葉に、閻魔大王は目を丸くする。
「咲久、連れてこい」
「はいな」
咲久は罪人達を連れて、謁見の間に入った。
「ぬらりひょんではないか!どういう事だ……?」
閻魔大王はぬらりひょんを見て愕然とする。
「閻魔大王様、申し訳ございません……」
ぬらりひょんは額を床に擦りつけるようにして、土下座をした。
「ぬらりひょん、何故なのだ?何故わしに夢見草なぞを盛った?」
「申し訳ございません、閻魔大王様からの期待に応えられる程の技量がなく、魔が差してしまったのでございます……」
「詳しく話せ」
閻魔大王は神妙な顔をして言った。
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