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「閻魔大王様は、妖界発展の案を私めに求めて下さいました。それはとても光栄なことでした。しかし、私にはご期待に応えられるような妙案など、思いつかなかったのでございます……。代わりに思いついたのは、とんでもない悪事のみでした」
ぬらりひょんは、床に額を擦り付けたまま話し始めた。
「ぬらりひょんよ、まずは面をあげよ。それで、その悪事とはわしに夢見草を盛った後にしたのだろう?何をしたんだ?」
ぬらりひょんはゆっくりと顔を上げると、意を決した様に小さく息を吸い、口を開いた。
「まずは夢見草について話させてください。夢見草や他の薬草を、経営が上手く行っていないレトロ街の洋菓子店に持っていきました。そして金と引き換えに、菓子を作らせたのです。閻魔大王様は洋菓子をお食べになる事がありませんでしたので、夢見草を盛っても気づかれないと……」
「その洋菓子店は夢見草だと知っててお前の協力をしたのか?」
「はい……。始めは彼らも断っていましたが、金をチラつかせると喜んで作ってくれました」
閻魔大王は悲しげな顔をし、首をゆっくりと横に振った。
「貧困や金は、やはり心を醜くするものだな……。して、お前の罪はなんだ?」
「手始めに遊女達の誘拐事件を企てました。女郎蜘蛛の妖力の糸に女狐の狐火を辿らせ、温泉街を照らせば、幻想的な景色が出来上がります。客寄せになり、風街も活気づくと思ったのです……。拐かしには力ある者が必要だと思い、夜叉に声をかけました。しかし、彼は強い者と戦う以外興味がなく、首を縦に振りませんでした。仕方なく夢見草を夜叉の日本酒に入れたのですが、勘づかれたのか捨てられました。いくら閻魔大王様が夢見草を口にして判断が鈍っているとはいえ、この事が知られてはまずいと思い、夜叉を解雇しました……」
「それで夜叉がここにおらぬのか……」
閻魔大王は自分の右前を見た。
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