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「はい、申し訳ございません……。次に私は、咲久に目をつけました」
ぬらりひょんの言葉に、全員の視線が咲久に集まる。
咲久は俯き、下唇を噛んだ。
「咲久の事はお前も気にかけていたろう?だというのに咲久に何をしたというのだ?」
閻魔大王は悲しむような、哀れむような顔をして聞く。
「閻魔大王様もご存知の通り、私はあのおぞましい屋敷から咲久を保護すると、施設へ入れました。咲久は立派に成長してくれ、今では風街温泉街を代表する番頭にまで成長し、自ら施設の経営までしております。私は図々しくも、恩着せがましくその話をし、咲久の前に大金を積みました。誘拐事件の協力をすればこれ以上の利益が入るから協力しろと……」
「ぬらりひょん、お前という奴は……」
閻魔大王は頭をかかえ、ため息をつく。謁見の間が薬草臭くなる。
「咲久にも妖界にも閻魔大王様にも申し訳ない事をしました。話は、まだ終わっておりませぬ。咲久はもちろん断りました。ですが私はどうしても咲久に協力をさせたかった……。猫の湯の従業員を、私直属の部下に数名拐わせ、咲久の施設の子供達や職員も人質にして無理やり協力させました……。その後私は、ひかりという少女を攫いました」
「ひかり、とな?」
「ひかりは俺の大事なひとり娘です。ひかり」
赤兵衛が優しく名を呼ぶと、ひかりはおずおずと赤兵衛の背中から顔を出した。
「ほう、利発そうな娘っ子だ。しかし、あれだな……」
閻魔大王は赤兵衛とひかりを見比べ、言葉を濁した。
「似てなくて当然です。まだ赤子だったひかりを、拾って育てたんです」
「ほうほう、そうだったか。ひかりとやら、お前の父は立派な男だな」
「はい、お父さんは私の自慢です」
ひかりは誇らしげに言い、赤兵衛は照れたように頭をかいた。
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