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「夕霧さん、再会できて良かったですね」
「あい。これも恭とあんさんのおかげ……。感謝しんす」
「いえ、私は着いて回っただけで……」
瑠璃が謙遜していると、夕霧は瑠璃の耳元に顔を近づけた。
「あんさんが来てから、恭は1度もわっちを抱いてくれんせん」
「え……!?」
夕霧は瑠璃から一歩離れると、妖艶な笑みを浮かべた。
「恭とあんさんはお似合いでありんす。幸せになりんしね?かおる、行きんしょ」
「あい」
ふたりは優雅な足取りで猫の湯から出て行く。
「お似合い、って……」
瑠璃は林檎のように真っ赤になった頬に、手を添える。
「瑠璃ちゃん?」
「ひゃいっ!?」
幸せに浸りかけていた瑠璃は、いきなり声をかけられおかしな声を出す。
「ふふ、可愛い。ところであれ、夕霧太夫よね?大丈夫だった?」
咲久は心配そうな顔で瑠璃を見る。
「あ、はい。大丈夫ですよ」
「ならいいけど……。今日はもう疲れたでしょ?部屋を用意したから休んでちょうだい」
「でも、まだ遊女達が……」
瑠璃はまだ見世の者と出会えてない遊女達を見る。また誰かが取り合いをされていた。
「瑠璃ちゃんは優しいわねぇ。あの子らも数が減ってきたから後は任せてちょうだい。アタシらは妖だから瑠璃ちゃんよりも体力あるし、何よりこう見えてもアタシだって男なんだから」
咲久は茶目っ気たっぷりに片目をつぶった。
(知ってます……)
瑠璃は素に戻った時の咲久を思い出し、心の中でつぶやく。
「分かりました。ではお言葉に甘えて……」
「こっちよ」
瑠璃は咲久に連れられ、猫の湯の最上階へ行った。
「この部屋を使ってちょうだい」
通されたのは、絢爛豪華で広い部屋だ。
「え?こんなにいい部屋、私ひとりでですか?」
「お詫びと感謝の気持ちを込めてね……。夕餉はもう、あの仕切りの向こうに置いてあるわ。それじゃあごゆっくり」
咲久は言い終わると、襖を閉めてしまった。
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