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「わぁ、綺麗……!でも私には大人っぽすぎませんか?」 「そんな事はない、よく似合っていた。お前も気に入ったのならこれにしよう。会計をしてくるから待っていろ」 「はい」 恭は店主に声をかけに行き、途中で止まることなく棚から何かを取った。 (何を取ったんだろう?) 瑠璃は気になりながらも、反物を見ながら待っていた。 「店主、これを」 恭は背の高い男店主に声をかける。 「おや、誰かと思えば恭くんかい。あちらの娘さんへかな?」 店主は優しい声音で言う。 「あゝそうだ」 「夏祭りに間に合うようにした方がいいかな?」 「是非ともそうしてくれ」 「ちょっと待ってもらうよ」 店主は女性従業員に声をかけに行き、なにやら話をしている。 女性従業員は頷き、瑠璃に声をかけに行った。 「しかし君が恋をするとはね。恋は本当に人を変えるね」 店主は小声で言った。 「恋?はて、なんの事やら」 「ま、そういう事にしておこうか。頑張ってね」 「……」 恭は言葉を返さずにそっぽを向いた。 瑠璃は採寸をしてもらうと、恭の元へ言った。 何故か恭は不機嫌そうにしており、店主はにこやかだ。 「お嬢さん、採寸お疲れ様。夏祭りまでには仕上げるから楽しみにしてて」 「……?はい、楽しみにしてます」 「瑠璃、行くぞ」 恭はそう言って反物屋を出る。瑠璃は首を傾げ、恭の後をついて行く。 ふたりはまっすぐ屋敷に帰った。 恭はすぐ書斎にこもってしまった。 恭が書斎にこもるのはいつもの事なので、瑠璃は特に気にすることなく屋敷の掃除をした。 しかし翌日、恭は朝餉が終わると、そのままぼんやりしていた。 いつもならすぐに書斎へ行ってしまうか、茶を飲んでから行くかだ。 (恭さんも疲れてるのかな?) そう思った瑠璃は、あえて声をかけないでいた。
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