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「できた!」 満足げに笑う瑠璃の前には、ふたつのオムライスが並んでいる。 瑠璃は慎重にオムライスを運んだ。 「瑠璃、これは……?」 恭はまじまじとオムライスを見る。 「オムライスっていいます。私が子供の頃に好きだった食べ物なんですけど、この前レトロ街の図書館に行った時にレシピ見つけたんです。恭さんにも、食べてもらいたくて……」 「そうか、ではいただこう」 この屋敷にスプーンなんてハイカラなものは置いていない。恭は一緒に運ばれた木匙(もくさじ)でオムライスをすくい、口に運んだ。 瑠璃は固唾を呑んで見守る。 「なかなか美味いな」 「お口に合うようならよかったです」 ホッとした瑠璃は、自分でもオムライスを食べ始めた。 (うん、美味しくできてる。またそのうち作ろうかな) 瑠璃は次はいつ作るか考えながら、オムライスを食べた。 朝餉が終わると、瑠璃は茶を淹れた。 「今日はいよいよ夏祭りですね」 「あゝ、そうだな。赤兵衛はひかりをちゃんと連れてくるといいが……」 「ふふ、きっと連れてきますよ」 「またひかりに屋台の夕餉を運ぶはめになるのは御免こうむる。しかし瑠璃、レシピ本を見つけたのなら借りればよかったではないか」 恭は思い出した様に言う。 「借りようかどうか迷ったんですけど、見ながら作って汚したら大変ですから」 「そうか。なら今度レトロ街の本屋に連れて行ってやろう」 「いいんですか?」 「あゝ、それくらい構わぬ。しかしまぁ、お前がいた世界には、美味いものがあるもんだな」 「色んな国の食べ物が気軽に食べられますからね。でも私、妖界みたいに毎日日本食の生活、好きですよ」 「そうか」 恭は安堵したような顔で返事をした。
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