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夕暮れ、瑠璃は浴衣に着替えた。 「恭さん、どうですか?」 瑠璃はその場でくるりと回ってみせる。 おろした黒髪が、艶やかに舞う。 「よく似合っている。瑠璃、後ろを向け」 「……?はい」 瑠璃はよく分からないが、言われるままに後ろを向いた。 恭は瑠璃の髪をすくいあげ、藤の飾りがついた簪で瑠璃の髪をまとめる。 瑠璃は緊張しながら終わるのを待つ。 「出来た」 言葉と同時に、自分の髪から恭の手が離れるのが寂しく感じてしまう。 「ありがとうございます。あの、この簪は……?」 「私からの、ささやかな贈り物だ」 「嬉しいです、大切にしますね」 「ん。さて、行くか」 瑠璃が花がほころぶような笑顔で言うと、恭ははやく行こうと瑠璃を急かした。 祭り会場へ行くと、たくさんの妖や人で賑わっていた。 「瑠璃おねーちゃん!」 声がする方を見ると、ひかりが赤兵衛の肩から手を降っている。 額の石は黄色く輝いている。 「ひかりちゃんに赤兵衛さん」 「ちゃんと連れてきてやったのだな」 恭達は、ひかりを見上げながら言う。 「おう!今日は酒なんか飲まねぇぜ」 「是非ともそうしてくれ」 恭はうんざりした顔で言う。 「瑠璃おねーちゃん、あのね、お父さんが飴細工買ってくれるの」 ひかりは足をぱたぱたさせながら嬉しそうに言う。 「そうなんだ、よかったね」 「うん!」 ひかりは嬉しそうに頷く。 「ひかり、赤兵衛が酒を飲もうとしたら蹴り飛ばしてやれ」 恭が言うと、ひかりは笑い、赤兵衛はバツが悪そうな顔をした。 「だから飲まねぇっての。ま、お互い楽しもうぜ。またな」 「ばいばーい」 親子は楽しそうに人ごみへ消えていった。
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