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「嘘って、どういう事ですか?」 「まだここに来たばかりのお前に、私は帰る手段は無いと言ったが、実は知っていたのだ……。年に1度、夏祭りの夜だけ、こうして人間界と妖界を繋ぐ鳥居が出現すると……」 「あの、なんで隠してたのでしょう?」 瑠璃は戸惑いながらも、現実から目をそらしてはいけないと質問をした。 「思いのほか、楽しかったんだ……。最初は次の夏祭りが来るまでと思っていた。その間、次の夏祭りはいつか、と問われるのが面倒だと思ってあのような事を言ったが……。その1年間、私にとって充実したものになった。お前との生活は、私に様々な感情や出来事で溢れかえっていて、来年こそはと思いながら今に至る」 恭の言葉は嬉しくもあるが、同時に瑠璃は悲しくなった。 「何故今になって教えてくれたんですか?」 「赤兵衛がひかりがいなくなったと来た時、もしこれが瑠璃だったらと考えて怖くなった……。ずっと屋敷にこもっていて忘れていたが、妖界の治安は改善されつつあるとはいえ、あまり良くない。瑠璃が誘拐でもされたら、最悪、殺されでもしたら私は……。そうなるくらいなら、治安のいい人間界で元気にしてもらった方がいい……」 「そんなの、ずるいですよ……」 「すまない……」 瑠璃の言葉に、恭は俯く。 「だが瑠璃、少しでも帰りたいと思っているのなら今が好機だ。もし今日人間界に帰らないというなら、私は一生お前を離さん」 恭は顔を上げると、瑠璃をまっすぐ見つめて言った。 「私、恭さんから離れたくないです……。こんなに好きなんですから……」 瑠璃はしがみつくように抱きついた。 「後悔しても知らんぞ?」 「後悔なんてしませんよ」 瑠璃が笑っていうと、恭は瑠璃を抱きしめた。 お囃子が消え、鳥居は数多の光となって散ってゆく。 幻想的な光の中で、ふたりは口付けを交わした。
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