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それから1週間、ふたりは寝室を一緒にしたり、一緒にいる時間を増やしたりしながら、着実に恋仲としての過ごし方に変えていっている。 そんなふたりの元に、月宮から文が来た。 「瑠璃、月宮に行くぞ」 「え?今からですか?」 「あゝ、閻魔がお呼びだ」 「事件の事ですかね?」 「さぁ、どうだろうな?行けば分かるだろう。出かける支度をしろ」 「はい」 瑠璃は部屋に戻ると、恭が夏祭りの日にくれた藤の飾りがついた簪を挿した。 身なりを整えると、外へ出る。恭は既にそこで待っていた。 「さて、行くか」 「あの、徒歩でですか……?」 恭の屋敷から月宮までは遠い上に、悪路がある。 「そのつもりだったが、お前には酷だな」 恭は瑠璃を横抱きにした。 「き、恭さん……!」 (お姫様抱っこっていうんだっけ?恥ずかしい……) 「落ちたら怪我ではすまないぞ?ちゃんとしがみついてろ」 「え……?きゃあ!」 恭は羽根を広げ、大空を飛ぶ。 「すごい……!まさか飛ぶなんて……」 下を見ればその高さに身を震わせる。 (確かにこれは、怪我じゃすまないよ……) 「前に言ったろう?私は鷹妖怪と人間の半妖だと」 恭は高らかに言う。 「そ、そうですけど……」 「やはり空は居心地がよい……。瑠璃、しっかりつかまれ」 「は、はい……」 瑠璃が更に力強くしがみつくと、恭は速度を上げた。 (速い……!) 恭の顔を盗み見ると、彼は楽しそうに口角を上げている。 (ちょっと怖いけど恭さんと一緒にだし、なんだか楽しくなってきたかも……?) 瑠璃が楽しいと思い始めると、月宮が見えてきた。 恭は速度を徐々に落とし、降下していく。 月宮に着地すると、恭は瑠璃を抱えたまま進もうとする。
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