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「恭さん、あの……」 「ん?下りるのか?」 「はい……」 瑠璃が返事をすると、恭は名残惜しげに瑠璃を下ろした。 謁見の間へ行くと、白い姿が目に付いた。 「よう、おふたりさん」 「夜叉、再就職したのか」 「ぬらりひょん捕まったんだってな?それで呼び戻してもらったんだ」 「よかったですね」 「お前らのおかげだ」 3人で話していると、大きな咳払いが聞こえた。 見上げれば不満そうな顔の閻魔大王がいる。 「3人だけで楽しそうに話すな。わしが呼び出したというのに……」 「す、すいません」 「気にするな、閻魔は年の割にお子様なだけだ」 「ははっ、言えてらぁ」 「余計なお世話だ。それより瑠璃よ、そなたに用があったのだ。おい、あれを」 「はっ」 近くにいた使用人は、瑠璃に小さな木箱を渡した。 「あの、これは?」 「開けてみるがよい」 閻魔大王に言われて箱を開けると、そこには鈴が付いた白い紐が入っていた。 「あの事件の関係者から話を聞いた。まぁ、そこにおる恭は報告書を寄越しただけだったがな……。それでも瑠璃、そなたが多くの人のために動いてくれたのはよく分かった。勇気ある行動とその清らなる心を讃え、希望の白鈴を贈る」 「わ、私も鈴付きって事ですか……?」 「そういう事だ」 「おめっとさん」 恭と夜叉はお祝いの言葉を口にする。 「で、でも私大した事は……」 「あの堅物で仏頂面の恭を変えた。事件の解決に貢献した。それは誰にでも出来ることではない。その清廉(せいれん)な心を大事にし、誇るがよい」 「え、えっと、ありがとうございます」 瑠璃は閻魔大王に深々とお辞儀をした。 「閻魔、用はもう済んだか?」 「相変わらずここには居たがらぬな……。まぁよい。用は済んだ」 閻魔大王は苦笑しながら言う。
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