縁結び神の独り言

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縁結び神の独り言

 武蔵野国(むさしののくに)河越(かわごえ)という街に、斐川(ひかわ)神社という(やしろ)があるんじゃが、ワシはそこに祭られる五(はしら)の神のうちの一柱、大己貴命(おおなむちのみこと)じゃ。大国主(おおくにぬし)と呼ばれることも多いのう。  「かの有名な大己貴命(おおなむちのみこと)を祭る神社は全国各地に多々あるが、どこにおわすのが本物か」じゃと? 良い質問じゃ。神は、「分霊(わけみたま)」といって、平たく言えば、小分けできるんじゃ。  だから、ワシもちゃんと本物じゃよ。  もう千五百年くらいここで暮らしとるが、河越の街は気に入っとる。小ぶりな割に、蔵造(くらづく)りの街並みを見に来る観光客で賑わっとるし、近くの菓子屋横丁を覗くのもなかなか楽しいでな。  ちなみに、河越の甘味と言えばイモじゃ。サツマイモの餡がたっぷり入った饅頭はなかなか美味いのう。  「ずいぶん甘党らしいが一体何のご利益の神サマか」じゃと? ワシは大己貴命(おおなむちのみこと)だと言っとろうが。主に縁結びを司っておる。  ほら、また一人、我が社へ恋の願いごとをしに来よったぞ。
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