一抹のファン

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「あのぉ、ひょっとして、“エイtoオー”の阿座都さんですか?」  ある日。暇を持て余し街中をブラブラしていると、思わず「かわいっ」と声を出しそうになるほどかわいい女の子に声を掛けられた。 「え、ええはい」 「やっぱり! ファンなんです! 握手してもらってもいいですか?」  耳を疑った。  去年養成所を卒業し、芸人の肩書きを手に入れまだ四ヶ月余り。舞台に出る機会も少なければ営業も頻繁に行っているわけでもない。ましてやテレビ出演なんか一度足りとも無い。SNSのフォロワーや動画投稿サイトのチャンネル登録数だって雀の涙だ。  そんな超、ド・マイナー若手お笑いコンビ、エイtoオーにファン? いやいや嘘だろ? まさかドッキリ? いや俺に仕掛けるメリット無いし。じゃあ、この子、ガチの……。 「応援してます。頑張ってくださいね」  彼女の手の温もりを感じつつ、俺は終始夢見心地のまま応対した。
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