会いたい人がいるのだから、ぼくは独りじゃない。

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会いたい人がいるのだから、ぼくは独りじゃない。

 惑星の空は白く煙いていた。  すべては冷たい氷の粒子によるもので、吹きすさぶその音は轟々とぼくの部屋の窓を叩く。  窓の外は地形も判然としないほど、どこもかしこも白い。ここは惑星A-rz7k8。  砂と岩と雪ばかりの地表の住人は15名ほどの惑星管理員とその家族だ。  そしてぼくは君に、惑星間伝書を送ろうとしている。 オゲンキデスカ コチラハ トテモサムイデス  書きはじめ、続きに迷った僕のペンは止まる。  それは利き手である左手の上で手慰みにくるりと回った。  ぼくがこの星へ転勤になる前、ぼくらは一緒に地球にいた。  でもこの赴任が決まったとき、こんな過酷な惑星に結婚前の彼女を連れて行くだなんて、ぼくは彼女の両親にとても言えなかった。  それでぼくは一緒に行くとごねる君でなく、飼い犬一匹を家族申請し、そいつとともに単身ここへきたのだ。  ターミナルで置いていかれると気づきそれはもう烈火のごとく怒る君が、ぼくは愛おしくてたまらなかったけど、そんなこと口にしたらもっと怒られそうだったから。  緩む顔を隠すように君を抱きしめた。  ごめんと大丈夫だよ、を込めて。  君の怒りが涙に変わるまでそうしていたかったけど、ロケットへの搭乗アナウンスでぼくは名残惜しく君の身体を離した。  そのときの君の子供のようにふてくされた顔を思い描いて口の端が小さく笑う。   それさえもう遠い日に思えた。
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