第一話 始まりの終わり

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第一話 始まりの終わり

 横腹の辺りが熱い。そこには料理に使う包丁が使われている。  ......俺は食材じゃねえんだけどな。  熱すぎて発狂しそうだが、そんな気力もない。  段々と目が霞み、力も抜けて何も出来る気がしない。  その時俺は死ぬんだな、と悟った。  俺の身体を幼女が泣きながら揺するが俺にはそれに答えてあげる気力がもう殆どない。  だけど俺はこの子に責任を負わしたらいけないと思い、最後の力を振り絞り笑顔で、  「大丈夫だよ」  赤江樹の人生はこの言葉と共に終わった。  ~数十分前~  俺高校二年生である赤江樹は、学校の帰り道に自分の自己紹介をしながら考えてしまう。  誰に話しかけているのか分からないが俺の脳内の人でもいい。聞いて欲しい。  自分の生きてるこの世界が何てつまらないものなのだろうと思ってしまう。  なんせこれからの人生はもう見えている。  高校を卒業したら、どこか適当に就職して、社畜として働く自分の姿しか想像できない。  嫌だ。社畜だけは勘弁だ。  誰か俺を養ってくれる女性はいねえかな。  俺がそんな現実逃避をしながら帰っていると、  「誰か助けて!」  そんな声が聴こえてきた。俺はすぐ駆け出しそこに向かった。  声がした方に行くと幼女を追いかけるニット帽にマスクに全身黒服の男がいた。  俺はすぐ助けに行こうと思ったがちょっと待て。幼女は泣きながら走って逃げている。  その場面は正直助けるのが当たり前の所だ。  だが、こんな偶然があるだろうか?  いや。これホラー映画の撮影かなんかだろう。  そう思ったが男が服の中から包丁を出した瞬間にそんな思いはどうでもよくなった。  もし、俺の勘違いなら、それはそれで黒歴史が増えるだけだ。  「ちょっと待てえええええ!」  叫びながら幼女を庇い前に出た。  男は驚いていたが包丁を伸ばす瞬間でそのまま俺の横腹に刺さった。  俺は力が抜けていきその場に倒れた。  ........まさか俺の人生で人助けをして終わるとはな。  男は他にも人が来るのかと思ったのかすぐに何処かに逃げていった。  幼女は俺の近くに来て何か言っているが分からない。  俺はこの子に責任を負わせたらいけないと思い最後の力を振り絞り笑顔で死んだ。
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