23

9/13
89人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「喜多川を夫に紹介したことは心底後悔しました。やはり夫はインサイダー取引が発覚した際に、自分が消されることを恐れていました。だから、夫のために、喜多川を抹殺する計画に協力しようと思いました。どうしても、何をしてでも、夫を守りたいと思いました。喜多川は私のことを幼馴染として信頼してくれていたし、夫に損させるつもりもなかったようなので、殺してしまうというのは、さすがに辛かったのですが…結局、私が喜多川を裏切ったんです…」 喜多川のような奴がミスミス殺されてしまうというのは、たぶん奴には、静華に対して、幼馴染に対する信頼以上の気持ちがあったのだろう。 ヤクザのくせして、純情な野郎だ。 喜多川は、きっと本気で、「旦那を殺した」と言ってきた静華を守ろうとしていたのだろう…。 「喜多川を殺して森の中に埋めてからは、仰るように、夫がレインコートを着て喜多川と入れ替わり、あの人と私は森から車で離れました。…その後のことです」 静華はそう言ってから目を閉じた。 「何ですか?」 「夫は…帰りの車の中で、私に…トカレフを向けてきました」 目を閉じたまま、静華は小さな声で、そう呟いた。 「えっ?」 「喜多川の死体からトカレフを奪ったのは夫でした。あの人には”喜多川もお前も用済みだ”と言われました。あの人は、全ての証拠を抹消したかったんですね。私も含めて…」 「…それで?」 「夫は私を撃とうとしていましたが、安全装置を外していませんでした。それで戸惑っている隙を突いて、私は襲いかかりました。それで、そのまま、揉み合っているうちに…」 「旦那を撃ってしまったというわけですか」 「はい…」     
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!