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俺は随分とにこやかな笑顔で、友好的に喜多川に話しかけた。 「そんなことやってる暇なんかねえよ。暇人のお前と違ってな」 古めかしい黒のバギースーツを着た喜多川は、虫ケラでも見るような目で俺を見たが、俺もちょうどそういう目で奴を見ていたところだったので、まあ人のことは言えまい。 「こんなとこでチマチマ煙草吸ってる奴が暇人じゃないってか?まあそうだろうな、あんたは今、忠実に職務を遂行してるだけだからな。雇い主は旦那か?」 「頭がおかしいのか?俺はドライブの途中で休憩してるだけだ。狂った妄想に付き合うつもりはねえよ」 「デコ助(警官)上がりの悪い癖でな、お前がキャデラック・フリートウッドを停めてるその場所は、駐車禁止区域なんだよ。何ならこのまま昔の職場に通報してもいいが?」 「勝手にしろ。デコ助が来る頃には俺はもうここにはいない」 「お前のキャデラックのナンバーをメモったよ…」 「その吐き気のする薄汚ねえ性分は、何一つ変わっちゃいねえな。だがお前はもうデカじゃねえ…」 「おいおい、人の話を最後まで聞けよ。俺の話が聞きたいのか、聞きたくないのか?」 「勿論、聞きたくないね。だが何だ?」     
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