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「でも、これはお前らを食い物にしようとか騙してるわけじゃない、お前の旦那にも十分に利益のあるものなんだ、と言ってました。実際主人の側も利益がかなり出ていたんです。それも、最初のうちだけ利益があるように見せかけて投資させるとかの、よくある詐欺とも違い、株の売買をする最初の元金は全て喜多川が用意したんです。主人は運用役に雇われただけだと言ってましたし、実際その通りだったのです」 「だったら相手がヤクザとは言え、ちゃんとしたビジネスパートナーだったというわけですか?」 「そうだったと思います」 「しかし実際は、喜多川は焦っていたんですよ。実はかねてからやっていたインサイダー取引に失敗して大損してましてね、あなたの旦那さんはその穴埋めに使われたのです」 「そうなんですか?」 静華は不安そうに顔をしかめた。 「それに利益が旦那さんの方にも出ていたとしても、喜多川が持ちかけたのはインサイダー取引です。そんなもの、まともなビジネスパートナー関係とは言えないでしょう。そしてあなたの旦那さんもそう思っていた。もしインサイダー取引がバレたら、全てを自分の罪としておっ被せられて、終いには消されるだけだと勘づいていた。まあ連中の常套手段ですからね」 「私は知らなかったんです…」 「あなたと喜多川は養護施設で、昔、仲が良かったようですね。マリア先生が言ってましたよ。だから久々に再会した喜多川から「助けると思って」とかなんとか言われて、旦那さんへの口利きを頼まれたんでしょう。しかしそれは旦那さんの命に関わる危険なものだと、あなたも途中で気がつき始めた」 「…。」 その時、俺の携帯に着信があった。     
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