23

8/13
90人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「あなたは喜多川の死体から、中国製のトカレフを奪っておいて、後でそのトカレフで旦那を撃ち殺した。そして、喜多川の死体の真上に旦那の死体を埋めた。私があなたと喜多川を尾行していて、私が旦那の死体を埋めていると思い込んでいることも察していましたね。ちょうどその同じ位置から、先に旦那の死体が出てくるようにして、それを逃亡中の喜多川の犯行であるかのように見せかけ、そう供述した。喜多川の子分の林原に、わざわざ喜多川が旦那を殺したという偽の告白電話まで、声を変えて、喜多川の携帯からかけてますね」 「…。」 「トカレフはもう処分したんでしょうね。しかし、それにしても…何故旦那を殺したんですか?それだけがよくわかりません。何故ですか?」 「…。」 「これはしがない元探偵の勘に過ぎないが、あなたは旦那さんを愛していたはずです。喜多川とあなたが手を繋いでいる姿と、あなた方夫婦が手を繋いでいる姿はまるで違って見えました。それに、あなたは旦那の喜多川殺害計画にまで手を貸している。私まで巻き込んでね。なのに何故旦那を殺したのか、全く腑に落ちません」 静華は、俯いたまま黙っていた。 俺も無理に旦那を殺した理由を聞き出すつもりはなかったので、ハワイコナの香りがするコーヒーを黙って飲んでいたが、しばらくして、急に静華は、俯いたまま重い口を開き始めた。 「私は、私は確かに、夫を、とても、愛していました。あの人は浮気三昧の生活をしていたけど、でもあの人は、私から気持ちが離れていたわけじゃないと思うんです。…そう思いたかった…」 「それじゃあ、何故?」     
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!