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ただの浮気調査のはずが、殺傷事件の後始末にまで発展するとは、とんだ厄介ごとを背負い込んだもんだ。
だから俺は気乗りしなかったのだ、と今更言ってももう遅い。
上原静華と、その夫が住む白亜の大邸宅は、いかにも金のかかっていそうな館で、ところどころに豪華な装飾が施されていた。
金持ちの成金趣味というほど悪趣味なものではなく、それなりにこだわりのある瀟洒な豪邸といった趣。
俺なんぞが一生かかっても住めやしないセレブな邸宅という奴なんだろうが、ハナからこんな邸に住みたいとも思わないので別に羨ましくも何ともない。
静華は、洗練されたデザインの玄関扉の鍵を開けると、大きな扉を開けて邸の中に入っていったが、俺もすかさず後に続いた。
玄関はリビングルームかと思うほど広く、その奥にある階段までは、かなりの距離がある。
静華はあの階段の位置から、玄関に立っている旦那をコルト・ウッズマンで撃ったのだろう。
「あの階段のところから撃ったのですか?」
「え?ええ」
「かなり距離がありますね。室内だから長距離というほどではないが、近距離とは言えない」
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