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怒涛のような9月だった。
田中はチームのメンバーへの引継ぎに追われた。10月は目の前だ。
中山良二に全面的に仕事を任せた。蓮が田中に途中から業務を任せたように中山に後のことを託した。
中山は温厚だが仕事については譲らない所がある。声を荒げることも無い。けれど蓮の言う『根っこ』となるものがある。
哲平は身辺整理に時間がかかった。何せいろんなものをデスクに持ち込んでいた。とうとういくつもの段ボール箱に分けて宅急便で自宅に送った。
溜息をつくのは千枝。
「どうせ私が片づけることになるんだわ。要らないと思う物は全部捨てちゃうからね!」
その頃にはもう哲平と千枝のことは部内に知れ渡っていた。
仲がいいんだか悪いんだかわからない。口を開くと千枝が哲平を叱り飛ばしている。
「もう哲平の夢見ていた『亭主関白』は遠い夢だな』
池沢の笑いに哲平は憤慨して言い返した。
「今だけですよ! これからは、ピシッ! とやっていくんですから」
「哲平さん、最初がこれじゃもう無理じゃないの?」
花がにやっと笑う。
「お前、人のこと言えんのか?」
「俺? 俺に逆らえるもんならそうして欲しいね。手応え無くってちょっと物足りないくらいなんだから」
「どうやら花んところは亭主関白みたいだな」
池沢の言葉に不服そうな顔だったが、そこに千枝が来たから哲平は黙ってしまった。
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