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「それはちょっと無理があるな」
大滝の言葉で、考えてみる。確かにそれは得策ではない。忙しさのあまり全体を把握できなくなる恐れがある。
「部長、ウチの中山良二ですが、田中から仕事を引き継いでいます。それをそっくり相田に渡したんですが。彼にチーフ代理を引き受けてもらってもいいですか?」
しばらく考えたが大滝にも今すぐの打開策が出ない。
「よし、田中くんを戻すまでそれで行こう。チーフの後任はすぐには見つからんが単なる欠員補充ならすぐに人を回せる」
「誰でもいいってわけじゃありません」
「分かっている。今度はきちんと人選するよ。しかし私生活のことまで拾いきれんからなぁ」
大滝の嘆きも分かる。大滝にすれば、せめて今回の不始末の相手が女性であってほしかったというところだろう。口が裂けても言えないが。
「相田の所に行ってみる。君は彼のそばにいてやってくれ。まだ具合悪そうだからな。無理はさせるな」
「はい」
蓮は中に入った。ベッドの上のジェイの顔は白かった。ジェイが目を開けた。
「まだ気持ち悪いか?」
「さっきよりいいんだけど」
「何かしてほしかったら言え。しばらく二人きりだ」
「蓮、俺ホントに謝りたいんだ。酔ってたし、今も酔ってるけど……そんなの言い訳にならない」
「そんなこと無いよ」
そっと頬を撫でる。
「気がついたらジッパー下ろされてキスされてて……すぐに動けなかった、ホントのことと思えなくて……記憶、ボヤけてて……」
「いいんだ、怒ってなんかいないから。大丈夫だ」
首筋にくっきり赤い跡が残っている。早く体を洗ってやりたい。そう思った。
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