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言うだけ言って、気遣わし気な顔で眠っているジェロームの方へ目を向けた。
「大丈夫でしょうかね。こいつ、明日まともでいられるのかなぁ」
「俺もそれを心配してたよ」
「まだ子どもだから…… 会社のそばの『フェアリー』って知ってます? あそこでパフェ食べてた時のジェロームの顔、幸せそうでしたよ」
「こいつ、そういうの食ったのことなかったんだって言ってたよ」
「え?」
「だからきっと食べても食べても足りないんだろう。給料が出るまではプリンもゼリーも食べられないって言っていた。だから本当に幸せなんだよ」
「……俺が昼、つき合います、こいつに。好きなとこついてって、知らないとこに連れて行く。哲平さん、うざかったです。しつこいし。でもあのお蔭で俺もちっとは変われた。ジェロームにいろんなこと、教えたいです」
「そうか。頼むよ、本当に」
花の気持ちが有難い。こんなに大切に考えてくれるとは思ってもいなかった。
「あと、合気道教えようと思ってます」
「合気道?」
「ええ。俺悔やんでるんだ。この前教えてやるって言ったんですよ、ジェロームに。なのにそのままにしちゃって。せめて基本だけでも教えておきゃ良かった……」
「お前が悪いわけじゃない」
「でも、取り返しがつかない。今夜、どうすんですか? こいつ、ここに一人?」
「いや、俺が泊まるよ」
「課長が?」
「ああ。俺の部下が俺の部下に傷を負わせた。こいつに申し訳無いことをしたと思ってる。相田がオフィスで絡んできた時、ちゃんとしておけば良かった。あれきり放っておいたからな」
「明日、ここにいます?」
「ジェローム次第だな」
「じゃ、メールします。来週は俺と三途さんでカバーしますよ、こいつを」
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