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ゆっくりと目が開き、濡れた明るい茶色の目が蓮を見返した。
「変わらない。お前は何も変わってないんだ。俺の知ってるジェイだよ。不安がるな、俺がお前を愛してるんだ。他のヤツなんか関係無い。俺がお前といたいんだ」
涙が流れ落ちた。
「俺、言われたこと覚えてる……」
「何を? 何を言われたんだ、あいつから」
「自分から……誘っておいて……お前は……いん、いんらんだ……って」
抱き締めた、強く。震える体を自分の胸に。
「そんな言葉、真に受けるな。俺が知ってる、お前がそんなヤツじゃないってこと」
「でもそうなんだよ、きっと。だから…だから気持ち良かったんだ…あの人の言ったこと……きっと正しいん」
口を塞がれる、蓮に。優しい口づけに。長いキスに。拒もうとしたジェイはそれでも蓮に追いかけられてとうとう身を任せた。
「今は混乱してるだけだよ。考えるのを止すんだ。俺とこうやって一緒にいよう。落ち着くまで余計なことを考えるな」
「無理だよ……知らない人の唇を……思い出すよ、あの感覚を」
蓮に不意に体が寄りかかる。
「どうした?」
「気持ち……わる……」
抱えてトイレに行く。吐いているジェイの背中をさすった。怒りが込みあげてくるのを止められない。
(なんでこいつが苦しまなきゃならないんだ!)
悪意の言葉がジェイに突き刺さっているのが分かる。やはりショックは大きかった。純粋だからこそ柔らかい心は簡単に串刺しになってしまった……
(あの野郎……)
けれど自分の怒りより最優先なのはジェイのことだ。どうしたらこの傷を癒してやれるのか。
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