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「少し横になれ」
青い顔をしたジェイをベッドに寝かせた。脇に椅子を置いて座る。ジェイの手を両手で握った。
「お前はな、きれいな心を持っているんだ。だから俺は惹かれた。お前みたいなヤツに出会ったことは無い。俺はお前がいてくれるだけで幸せになれるんだ。あんなこと言うな。マンションから出るなんて。そばにいてほしい」
その後はもう返事も無く、ただ静かな時間が流れた。
今のジェイを抱くのは傷を深めるだけだと思う。だから必要以上に触れないようにした。体を刺激したくない、この状態のジェイを。
(もう少し落ち着いたら抱きしめたい……お前だけをこんなに愛しているんだと体に伝えたい……)
妙な気遣いとすれ違いが生まれ始める。
抱き締めて欲しかった。忘れさせてほしかった。けれど自分から求めるのは怖かった、本当の淫乱のような気がして……けれど抱きしめてほしかった……
互いの心が見えないまま、午前中が消えた。
「ジェイ、腹が減ってないか?」
「……ううん……」
「じゃ、スープだけでも飲め。俺も腹が減った」
食事をフロントに頼んだ。そばに行ってジェイの髪を撫でた。ピクリとする体にそっと手を離していく。
(離れ……ないで……)
けれど声には出ない。
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