3.見失う

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   マンションに戻った。あれ以上ホテルにいることに意味は無い。蓮はとにかくジェイの心を軽くしたかった。 「何もしなくていいから」  上着を脱がせてネクタイを解き……そこまでしてジェイの激しい抵抗に驚いた。 「自分でやる!」 「どうしたんだ?」 「………」 「言わなきゃ分からないよ、ジェイ」 「……あの人に……脱がされたから…思い出したんだ、それを。ごめん……」  頭を引き寄せた。 「いいんだよ、お前が悪いわけじゃないんだ。ごめんな、配慮が足りなかった。泣きたかったら泣け。抱え込むな」 「れん……俺、俺ここを出て……」 「それは絶対にだめだ! 辛いなら尚更一緒にいなきゃだめだ、独りになんかなるな」  強い語調を緩めた。 「俺はな、お前に幸せになってほしいんだ。いつもそう言ってるだろう? 今日と明日はお前の好きなようにしよう。来週のことは後で考えよう」  抱き締められたまま頷いた。 (蓮が……好きなのに。なんで? 俺が誘った……誘った……)  深く潜った棘が抜けない。自分の中に知らない自分がいる。  こんな自分がどこにいたのか。幻の自分に苛まされて行く。無い影を自分の中に感じてしまう。 「ジェイ、明日、どこか行こうか」 「……行く?」 「ああ、ドライブしてさ、気晴らしして来よう」 「……うん……」  連れ出そう。外の空気を吸わせたい。風に当たれば気持ちも解れるだろう。  その夜はただジェイを抱きしめて眠った。 (何もしない……俺、汚いから……?) ただ抱きしめるだけの蓮が悲しかった……   
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