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「ジェイ! ジェイ、どこだ!」
広い家じゃない、どこにもいない。目が覚めたら脱いだパジャマがきちんと枕に置かれていた。書置きもない。早い時間に出たのだろう、バスルームは冷えていた。
(なんで気がつかなかったんだ!)
自分が情けない、ジェイの心を見失ってしまった。
(どこに?)
蓮はキーを掴んで車に走った。
てっきりここに来ていると思った。けれどアパートは静かだった。
(じゃ、どこだ!?)
一つの場所が浮かんだ。きっとジェイはそこだ。蓮は車を飛ばした。小雨が窓に当たっていた。
(母さん……俺、どうしたらいいか分からないんだ……)
ただ、墓の前に立っていた。明るかったグレイの空がどんどん暗くなっていく。小さな雨粒が頬を、体を濡らし始めた。
(俺ってなんなんだろう……母さんはこんな俺、望んじゃいないよね)
答えがあるはずも無く、水滴が髪から滴り落ちていく。
「ジェイ」
見上げると少し離れたところに蓮が立っていた。
「迎えに来た。そばに行ってもいいか?」
涙が溢れた、雨ではなくて。蓮が……来てくれた。ジェイは蓮に飛びついた。
「やっぱり……独りはいやだ……イヤだ、蓮、独りになるのは怖い……」
「お前を独りにするわけ無いだろう? いつだって一緒だ、お前を愛してるんだから」
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