605人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
ずぶ濡れの体を擦った。
「こんなに冷えて。じゃ、お母さんとはたっぷり話したろう?」
「何も……何も答えてくれなかった……」
「それはお前のこと、安心してるからじゃないか?」
「安心?」
「お母さんには何も変わったようには見えなかったってことさ」
(変わって……ない?)
小さい子どもじゃない、だから死んだ母が答えてくれると本気で思っているわけじゃない。けれど母ならこう言ったかもしれないという言葉が欲しかった。
「蓮……本当にそう思う? 俺、変わってない?」
「変わったとは思えないけどな。お前だからあんなことで罪を感じるんだ。お前だから自分を許せないんだ。だから何も変わってないよ」
「俺のこと……汚いって思わないの?」
「おい、怒るぞ! 最初に言っただろう? 困るなら困る、イヤならイヤだと言うって。そんな風に思うならここまで追いかけて来ない」
「うん……うん、俺、嫌われると……嫌われてると思ったんだ」
「なんで! 俺、そんな素振り見せたか?」
「だって……抱いて……くれなかった……」
最初のコメントを投稿しよう!