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第02話 嫌な予感
「今日は大切なお客さんが来るから外で遊んできてね」
そう言われるのが辛かった。
また、この日が来てしまったと思った。
確かに、昨日の夜から何か嫌な予感がしていたし、それは良く当たっていた。
恐ろしい外の世界と隔絶され母とシーニィと過ごす素晴らしいこの世界。
どうして追い出されなければならないのだろう。
大切なお客さんが来た後は少し贅沢な食事になっていたし、いつもの仕事よりも母が嬉しそうなのは明らかだった。けれど、外にいる自分が感じる孤独や恐怖と引き換えにしなけばならない程の事なのだろうか。食事なんていつも通りで良い。三人でとる食事はとても美味しいのだから。
けれどぼくはなんのやくにもたっていない。
働いてご飯を増やすどころか学校にも通えていない。
このロシアの言葉さえ、きちんと聞き取る事も出来ていない。
大切なお客さんがもたらす、ご飯や笑顔は、少年が強く欲している大人としての力そのものであり羨ましく妬ましかった。そして、そうする事の、その入り口にさえ立てていない無力さから来る申し訳無さは、家を追い出される嫉妬心を大きく上回る強固な壁として存在していた。
だからこそ大人しく家を出ていた。
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