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男性の目を引く事は珍しく無いし、心無い誹謗の対象になる事も少なくなかった。
完全に悪目立ちしていたのだ。
その上、何故か少年の髪は白髪に近い灰色だった。
ここは経済的に貧困層と呼べる人々の住む地域。
出入りが多く、周囲に比べてもそれ程閉鎖的では無い。
それでも親子は目立ってしまったし、幼い子供達にとって少年の髪は格好の的となってしまった。
外で遊べる陽気の日、近所の子供達と遊ぼうと話しかけても、逃げられ、罵倒され、時には悪役として暴力をぶつける対象となってしまう事も珍しくなかった。
その為、親子は、少なくとも少年は地域の中で完全に阻害され孤立し、家庭内では日本語を使っていた事も災いし、やがて学校に通うようになっても言葉の壁高く、教室に馴染む事なく不登校となってしまっていた。
学校に行って勉強してお母さんを助けなければならない。
そんな事は十分良く分かっていた。
しかし怖かった。
目、言葉、暴力、例えそれが優しい笑顔だったとしても。
自分に向けられる何もかもが自分を汚し苦しめるように感じてしまうのだった。
いつしか少年は母とかわす言葉も減らしてしまった。
ある日、母はアパートの前で怪我をしている黒い鳥の雛を見つけた。
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