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上を見れば屋根の近くに巣があったが、とても手が届きそうにない。
落ちた際に軽い怪我もしていたようだ。
治療の為、そっと家に持ち帰ると少年は目を輝かせて喜んだ。
傷口を消毒し餌を与えた。
元気になったら自然に返してあげようと名付けなかった。
やがて、回復と成長により、少しずつ部屋の中を軽く飛び回る事が出来るようになった。
まだ黒い産毛は残っていたけれど、厳しい冬を待つ訳にはいかなかったから。
二人は天気の良い日を選び、森近くの公園を訪れた。
名付けなかったものの情は沸いていた。
初めて育てた小さな命だったのだ。
母に肩を抱かれるまで、少年は動く事が出来ずにいた。
「元気でね」
そう語りかけ優しく空へとうながす。
小鳥は青空へと駆け上がった。
しかし、気持ちよさそうに数回旋回しては見せるのだが、小鳥は少年の元へと戻ってきてしまった。
困った顔で覗き込む母には
「ちゃんと帰って来てるのに。何を怒られているのだろう」
そう不思議がっているようにさえ見えたという。
「ダメだよ。頑張れ!」
飛ばせては戻る。そんな行為を楽しんでいるようにさえ見える。
何度試しても、少し飛んでは少年の頭の上へと戻ってしまうのだ。
自然に返してあげなきゃ。
しかし、帰って来てしまう。
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